水虫の基礎知識
水虫とは『白癬菌(はくせんきん)というカビが人体に寄生、増殖すること。それによって伴うかゆみや痛み、炎症などの症状』を指します。白癬菌は高温多湿の場所を好み、多くが足に発生するのは、靴の中がその条件にあてはまるためです。また、完治に時間がかかることも特徴です。
女性の70%が感染している水虫
水虫=男性というイメージがありますが、最近では女性の水虫患者が増えています。その主な原因は靴。冬場に女性に好まれているブーツは熱がこもりやすく、また中までしっかりと乾燥させるのが困難です。湿度を好む白癬菌にとっては、とても繁殖しやすい環境なのはわかってもらえるでしょう。
夏場でも、つま先が細く指を圧迫するようなヒールやパンプスは、指の間に隙間が無いために非常に蒸れやすいといえます。さらに圧迫されることで常に緊張状態にあり、より多くの汗をかくことになります。これだけ白癬菌が増殖しやすい環境にあるのですから、女性が水虫にかかりやすいのは当然なのかもしれません。
水虫は恥ずかしい→放置→悪化
感染率が上がっている陰には『水虫になったことを恥ずかしくて人には相談できない』という要因もあるしょう。 水虫には『汚い』『不潔』といったイメージがつきものです。実際、衛生面に気を使わない人にかかりやすい病気ではありますが、非常に感染力が強いため、誰にでも感染する可能性があります。
また、感染の初期では痒みといった症状がなく、気付いた時には自力での治療が困難な所まで悪化していることも少なくありません。しかし、その状態までなると、今度は皮膚科の医師に対しても『汚い』足を見せることに抵抗を覚え、そのまま市販の薬で治療を続けているという人も多いでしょう。ですが自力での治療には限界があり、治療と再発を繰り返すという悪循環に陥りかねません。
水虫の予防法
水虫は感染しやすく治療に時間のかかる病気ですが、正しい予防法を知っておけばそれほど心配する病気ではありません。以下の3つのポイントを押さえておくだけで、ほとんどの水虫は防げるでしょう。
ポイント1. 足は毎日清潔に
皮膚に付着した白癬菌が定着するまで、約24時間を必要とします。そのため、毎日足を清潔に洗っていれば水虫になることはないでしょう。
効果的な足の洗い方
殺菌成分の強い石鹸を使う必要はなく、市販の石鹸で問題ありません。よく泡立て、特に繁殖のしやすい指の間は一ヵ所ずつ念入りに洗うのが効果的です。また、洗った後は水分を拭き取り、よく乾燥させることも重要です。
ゴシゴシ洗いは水虫の元
ただし固いタオルや軽石で、強くこするのはやめるべきでしょう。皮膚に傷がついていると、白癬菌はその傷口から侵入し、12時間で定着すると言われています。入浴直後は菌がいなくても、その後に付着した菌により感染する可能性があります。
洗い過ぎるのも逆効果
繁殖を防ぐのに必要なことは乾燥です。何度も足を洗い、水分を吸った角質がふやけてしまうと、そこに白癬菌が住み着いてしまいます。足を洗う回数は1日に1回か2回程度。どうしても気になるのであれば、足にかいた汗を拭き、除菌効果のあるスプレーなどを使ってはいかがでしょうか。
ポイント2. 靴が水虫になる最大の原因
足についた白癬菌は、蒸れた靴の中で爆発的に増殖し、その後も靴の中に残り続けます。そのため、靴のケアを怠っていると、いくら足を綺麗にしても常に水虫の危険にさらされていることになります。
靴の菌は『除菌』と『乾燥』で減らす
脱いだ後の靴に殺菌効果のあるスプレーを使用します。ただ商品によっては靴にダメージを与える(革が変色する)可能性もありますので、使用の前に確認しましょう。その後は中に乾燥材をいれ、風通しの良い場所で乾燥させます。靴の中にまで染み込んだ汗を乾燥させるには、一晩では足りません。靴は3足揃え、ローテーションさせて使用するのが良いでしょう。
ポイント3. 水虫の感染経路を知る
水虫の原因菌がどこから感染するかを知ることは、水虫の危機管理として重要です。白癬菌は空気感染しません。病気がうつるのは『直接、白癬菌に触れた時』と『白癬菌に感染した角質に触れた時』に限定されます。
公共施設の備品は危険
病院や旅館で履くスリッパ。温泉施設の脱衣場など、不特定多数の人が裸足や靴下で使用する場所や物は危険と考えた方がいいでしょう。
- スリッパが必要な場所にはマイスリッパを持参する。
- 湿ったマットは直接踏まない。
- 疑わしい場合は洗うか、菌が繁殖しないよう水分を取りよく乾燥させる。
といった、対策を取るのが安全です。
家族から移されるケースが最も多い
角質に含まれる白癬菌は1年間も生き続けたという記録があります。もし家族の誰かが水虫の場合は、水虫の元となる角質が家庭のどこかに落ちていないか注意しましょう。
バスマットを共有している場合は感染を疑った方がいいでしょう。また、絨毯や畳も感染源となりえます。他に家族からの感染経路としては、爪切りも忘れてはいけません。安全の為にも自分専用の爪切りを用意しておくのが良いでしょう。
ペットからも水虫は移る
水虫は人にしかないと思っていませんか?白癬菌は犬や猫の皮膚にも存在し、スキンシップによって移ることがあります。もしペットに脱毛や斑点、同じ個所をずっとかいているような症状が見られたら、獣医に相談してみてはいかがでしょうか。
水虫の治療は根気が必要
それでも水虫にかかってしまったら、皮膚科で医師の診断を受けることをおすすめします。『恥ずかしいから市販の薬で・・・』と考えたいかもしれませんが、『水虫だと思っていたものが、実は全く別の皮膚病だった』ということもありますので、確実な治療のためにも皮膚科の専門医へ相談するのが良いでしょう。
水虫が再発しやすい理由は潜伏期間の長さ
角質の奥に住み着く水虫は、皮膚の表面がキレイになったとしてもその奥で生き続けている事が多く、一見すると治ったように見えても再発の危険があります。角質の奥にいる白癬菌には薬が届きません。
そのため、新陳代謝によって奥にいる白癬菌が、角質ごと表面に押し出されてくるのを待つ必要があります。水虫の症状が消えるまで1ヶ月。さらに足の角質が入れ替わるまで3ヶ月。ただし角質が入れ替わる3ヶ月の間にも、さらに奥へと侵食していることもあり、完治を確認するまで最低でも半年から1年は薬を使い続ける必要があるでしょう。
水虫は予防できる病気です
水虫は感染しやすい病気ですが、感染経路は限られていますし、日々のケアで十分に予防することが出来ます。一度感染すると長い付き合いとなるだけでなく、他人にも感染を広げ、その相手が家族だった場合は治療と感染を繰り返すことにもなりかねません。
水虫で皮膚科に行くと、女性の割合が多いことに驚くことでしょう。一人で悩みながら感染を広げるよりも、皮膚科できちんとした治療を受けた方がストレスも軽減され、建設的ではありませんか。